駒大苫小牧高校の甲子園優勝に北海道が沸いた。
ニュースによれば、地元の苫小牧では試合の時間中、街から人が消えたのだそうだ。もちろん観戦するためだ。
テレビにうつる苫小牧市民の笑顔。
そう遠くないところで、こんなに沢山の歓喜にむせぶ人たちがいる。
市内はどんな騒ぎになっているのだろう。っていうか、すんごい優勝セールとかやってたりしてたらいいな。
見に行ってみることにした。
1.しかし道のりは長く険しい
私の家は苫小牧まで車で1時間くらいのところにある。
今春引っ越しをして、思い立ったらふらっと出かけることのできる自由を手に入れた。
だがあれこれやったのは初めの数ヶ月だけ。
いつの間にか長くなった余暇を長いと感じなくなり、
かつてと同じように家でテレビを見て過ごす時間ばかりが増えていた。
これではいけない。
私は自由なんだ!
と勝手に盛り上がって鼻息あらく決断し、時刻表を広げた。
…。
電車がない…
バスもない…
ここは田舎。心が自由でもこの環境では体が自由になりませんでした。
一番早い電車は1時間半後。しかも乗り継ぎしなければならない。
なんとかテンションを維持しつつ、仕方なく待つ。
一時間半後、待ちに待った電車に揺られて、乗り継ぎの駅には20分ほどで着いた。
しかし次の電車までは1時間待ち。予想以上に長い旅路になりそうだ。
乗ってきた電車にはビジネスマンらしき男性や同年代の女性も何人かいたのだが、
降りた途端、向かいに停車していた札幌行きの特急に乗って行ってしまった。
残されたのは私と、大きな荷物を抱えたジャージ姿の女子高生が4〜5人。
考えたら苫小牧だって、確かに特急で行ってもいい距離だ。
「大人は特急で行くんだよ」と言われたような気分になる。これでは大学生の旅行のようだ。
スロウライフだ。
いやちがう、単に暇で貧乏なだけだ。
女子高生達はにぎやかにおしゃべりしている。
一人の私はおとなしく、待合室の壁の落書きなど鑑賞する。
そ、そうなの・・・?
「今年の冬は寒くなるよ」。
夏が終わると秋の気配を感じるまもなくスタッドレスタイヤのCMが始まる北海道。
残暑だ秋だなんて言ってるけど、こんな文を目の当たりにすると、冬はすぐそこまで来ていることを思い知らされる。
書いた本人も、例年にない暑さだった今年の夏に浮き足立つことのない、クールな自分を誇示したかったのかもしれない。
しかし残念なことに「自慢」を間違えている。
もしかしたら「自爆」と書いたのではないかという気もしてくる。
そのまぬけ加減に、寒さを思う憂鬱も少しは和む。
あと、他の場所に「高田の下道 埋めるぞ」と書いてあって、
下水道を埋めて花を植えるぞ!みたいな決意表明というイメージを漠然と抱いていたのだが、

こっちを見て謎が解けた。これは高田さんの生命を脅かそうという警告文だったらしい。
だがこちらも漢字が違っている。
しかも誰かに「下道じゃなくて外道だろ」と訂正され、バカ呼ばわりだ。
「湾」の字の乱れから察するに、こっちもあまり自信がなかったのではないか。
凶暴きわまりない内容にも関わらず、何かほほえましさが漂う一文である。
その他1学期の思い出だの、愛の告白だの、何かのチームの名前「○○参上」だの、
いろいろとにぎやかに書いてあってしばらく楽しめた。
女子高生のおしゃべりは絶え間なく続いている。響き渡る笑い声。
平日の昼間だから、部活の大会でもあるのかもしれない。
誰かがつまづいたからといって笑い、
忘れ物をしたと言って笑い、
ホームに腰掛けて駅員さんに怒られて大笑い。
最後のは笑い事ではなさそうだが、あの頃って何でもとにかく笑っていた。
楽しかったなあ、うんうん。
私は電車で高校に通っていたが、ここは雰囲気や規模がそのとき使っていた駅によく似ていて、懐かしい気分にさせられる。
ノスタルジー。
なんて思っていたら電車がやってきた。